保健衛生事業団 設立50周年記念誌

放射能検査事業の立ち上げから終了まで 平成23年3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所 の事故後、食品や飲料水、さらには生活環境における放射性 物質の影響が社会的な課題として大きく取り上げられるよう になりました。食品等の安全性を客観的に確認する体制の整 備が急務となり、食品環境検査所では平成24年3月から放 射能検査事業を開始しました。事故直後の混乱期において迅 速に役割を果たすことが求められた時期でもありました。 事業の立ち上げにあたっては、測定機器の導入、測定環境 の整備、検査手法の確認、職員への技術研修など多岐にわた る必要な準備を段階的に、かつ短期間で進める必要がありま した。当時は測定機器の需要が急増し、機器の確保は容易で ありませんでしたが、平成24年3月にNaIシンチレーショ ンスペクトロメーターを導入して簡易測定を開始し、同年6 月にはゲルマニウム半導体検出器を導入して精密測定を実施 できる体制を整えることが出来ました。 検査対象となった検体は、学校給食、一般食品、医薬品、 飲用水のほか、浄水発生土や下水汚泥といった環境試料など 広範囲に及びました。これら多様な試料に対しては、関係法 令や国の通知等に基づいて適切な手法で検査を行いました。 これら性状の異なる検体を正確に測定するためには、検体の 前処理から充填、測定時間の管理に至るまで一貫した精度が 求められるため、当検査所では検査手順の標準化を徹底する とともに、外部機関が実施する精度管理事業に継続して参加 し測定条件の妥当性を確認することで、測定結果の信頼性と 客観性の確保に努めました。 また、長期にわたって安定した検査品質を確保するため、 特定の担当者に業務が集中しないよう研修を通じて職員間の 検査技術の平準化を図りました。あわせて定期的な機器の校 正とメンテナンスを実施することで、担当者が変わっても一 定の精度を維持できる体制にしました。これらの取組みは、 検査精度の向上だけでなく、職員一人ひとりの技術力向上に もつながりました。 事業開始以降、現在までに実施した検査数は累計で8,400 件余りになります。年度により受託件数には増減がありまし たが、いかなる状況でも検査体制を維持し継続的に業務を遂 行してきました。 これまでの検査で、浄水発生土にて放射性セシウムが検出 限界値を上回る事例が確認されましたが、学校給食や一般食 品、飲用水などでは検出例はありませんでした。 一方で、放射能検査を取り巻く社会情勢は事業開始から十 数年の歳月を経て変化しました。近年は、県内における放射 性物質の検出状況は低い水準で推移しており、これに伴い自 治体など検査の依頼元では検査事業の見直しや終了が進めら れてきました。こうした状況を踏まえ、当事業団における食 品および飲用水の放射能測定業務は令和7年度末をもって終 了することとなりました。 事業の終了は一つの区切りですが、これまでの取り組みで 得た経験は今後の検査事業に活用し、検査品質の維持・向上 に役立てていきます。食品環境検査所は、「必要な時に、必 要な検査を、確かな技術で提供する」という姿勢をこれから も大切にし、県民の皆さまの健康と安心の確保に引き続き取 り組んでいきます。 (鈴木 貴行 記) NaI シンチレーションスペクトロメーター ゲルマニウム半導体検出器 Tochigi Public Health Service Association 21

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