当事業団では、栃木県の委託事業として、県内で出生した新 生児を対象に、公費による新生児マススクリーニング検査を実施 してきました。検査開始当初、5疾患であった対象疾患は、ア ミノ酸代謝異常症5疾患、有機酸代謝異常症7疾患、脂肪酸代 謝異常症5疾患、糖代謝異常症1疾患、先天性甲状腺機能低下 症および先天性副腎過形成症の計20疾患へと広がりました。 近年は、検査技術の進歩や治療法・治療薬の開発が大きく進 展し、疾患の早期発見・早期治療による予後改善がより期待でき るようになりました。こうした状況を受け、全国的に新生児スク リーニングの対象疾患が拡大される動きが進んでいます。栃木 県においても、難病である脊髄性筋萎縮症(SMA)と複合免疫 不全症(SCID)の2疾患を対象に、自治医科大学附属病院、獨 協医科大学病院、済生会宇都宮病院との共同研究として、新生 児マススクリーニング体制の確立を目指した臨床研究事業を開 始しました。令和4年4月からの1年間、公費による新生児マ ススクリーニングにこの2疾患を追加し、当事業団も共同研究 機関として参画しました。 臨床研究事業は、栃木県産婦人科医会の協力を得て、県内す べての産科医療機関において、公費スクリーニングと同様の受検 体制を整えることができました。また、臨床研究期間中にSMA 患者が発見されたことも大きな契機となり、栃木県では令和5 年4月からSMAおよびSCIDに対する公費負担によるスクリー ニングが全国に先駆けて開始されました。保護者の費用負担な く検査を受けられる体制が実現したことは、驚きとともに大き な喜びを感じました。 さらに、令和7年4月からは当事業団の新たな取り組みとし て、ライソゾーム病等スクリーニング検査を開始しました。対象 疾患は、ファブリー病、ポンペ病、ムコ多糖症Ⅰ型、ムコ多糖 症Ⅱ型、副腎白質ジストロフィーの5疾患です。ライソゾーム 病等スクリーニング検査も公費スクリーニングと同様に、栃木 県で出生した赤ちゃんを対象としており、産科医療機関や助産 所を通じて申し込むことで検査を受けることができます。検査 の開始にあたり、産科医療機関への事前説明に加え、保護者の方々 に向けたリーフレットも作成しました。聞きなれない「ライソゾー ム病」について、少しでも安心して理解を深めていただけるよう、 どのような病気なのか、どんな検査を行うのかを簡潔にまとめ、 イラストも添えて親しみやすい内容になるよう工夫しました。 ライソゾーム病等スクリーニング検査は有料の任意検査です が、公費スクリーニング検査の残余検体を利用するため追加採血 の必要がなく、また産科医療機関での丁寧な説明もあって、多 くの保護者の方にご理解いただき、受検率は約90%と高い水準 を保っています。一方で、約10%の赤ちゃんは検査を受けられ ていない現状があり、全国的にもスクリーニングの受検状況には 差が生じています。すべての赤ちゃんが平等に検査を受け、健 やかに成長していける環境が整うことを心から願っています。 新生児マススクリーニングは、早期発見・早期治療につなげ るために、正確な検査を行い、迅速に結果をお返しすることがと ても大切です。私たちが日々向き合っているろ紙血検体のその先 には、赤ちゃんとご家族の思いがあることを、常に心に留めてお かなければならないと感じています。子どもたちの健やかな成 長に少しでも力になれるよう、確かな知識と技術を身につけな がら、毎日の検査に丁寧に取り組んでいきたいと思います。また、 検査機関として関係機関との連携を深め、検査体制の充実と精 度の維持・向上にも引き続き努めてまいります。 (関口 梨沙 記) 先天性代謝異常等検査における拡大スクリーニング(脊髄性筋萎縮症および 複合免疫不全症)とライソゾーム病等スクリーニングの追加検査について Tochigi Public Health Service Association 35
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