保健衛生事業団 設立50周年記念誌

事業団で初めてデジタルX線装置を搭載した検診車が導入 されたのは2005年、胃肺併用車の「あすなろ2号」でし た。当時、デジタルカメラやカメラ付き携帯電話が普及して おり、デジタル画像そのものは身近な存在になっていました が、検診におけるX線画像をデジタルで扱うことは、検診現 場にとって非常に大きな転換点でした。 いわゆるファミコン世代の私にとって、頑張って進めた データが突然消えてしまう、なんてこともよく経験していま した。撮影した一日分の画像データが1枚のDVDに保存で きる手軽さに感動を覚えた半面、少なからずデータが消えて しまう怖さを感じていたのを覚えています。その後、検診車 の更新計画に基づき、順にデジタルX線装置への切り替えが 進められ、2017年3月に全検診車のデジタル化が完了し ました。導入当初から画像のバックアップ体制が整えられて いたこともあり、現在までデータ消失などの大きなトラブル はなく、安定した運用が続いています。 デジタル化を語る際、どうしてもアナログフィルム時代の 記憶がよみがえります。当時は、検診業務を終えて事務所に 戻ると、まずフィルムを自動現像機に「流す」作業を行って いました。検診で使用していたアナログフィルムはロール フィルムと呼ばれるグルグル巻きになっているフィルムを使 用しており、現像中に「ガタガタッ」と異音がするとロール フィルムが途中で絡まってしまった音です。フィルムに光が あたらないよう部屋を真っ暗にして、ドキドキしながら現像 機を開けフィルムの絡まりを解消させようとしたことを今で も覚えています。場合によっては再撮影をお願いせざるを得 ず、受診者の方々にご迷惑をおかけすることもありました。 こうしたトラブルや再撮影のリスクはデジタル化により大幅 に軽減され、検診の安全性と業務効率は飛躍的に向上しまし た。 また、デジタル化の大きな利点として、画像処理技術の活 用が挙げられます。撮影後に明るさやコントラストを調整で きるため、さまざまな体型の方でも安定した画像で描出する ことが出来ています。さらに近年では、AIを利用した画質向 上技術や診断支援(異常所見検出)に関わる技術が急速に発 展しています。当施設においても、すでに一部検査でAI診断 支援システムを導入しており、多数の画像を読影する先生方 には、検診の精度を支える心強い存在となっています。 一方で、アナログ時代は現像するまで画像を確認できな かったため、1回の撮影に対する慎重さが今より強かったの かもしれません。日常使用するデジタルカメラでも何枚か撮 影して良い画像だけ残す、ということをしていると思います が、私たち放射線を扱う技師にとっては受診者の被ばくをで きるだけ抑えて撮影することが責務です。診療放射線技師と して1回1回の撮影を大切にし、その中でより情報量の多い 画像を提供していくために、デジタル化された利点を最大限 に活用していきたいと思います。 デジタル技術は日々進化しており、次の記念誌を作成する 頃には、どのような新技術が検診に導入されているのか想像 もつきません。利便性の向上だけでなく、画像処理技術やAI の発展によって、検診そのものの質が確実に高まっているこ とを実感しています。これらの技術は、現場スタッフだけで なく、受診者の方々にとっても大きな安心と信頼につながっ ています。アナログからデジタルへ、50年誌としてこの歩 みを振り返ると、X線検査のデジタル化は単なる機器更新で はなく、検診の質と信頼性を高める重要な転換点であったこ とを改めて実感します。 (堀江 聡 記) X 線撮影デジタル化の歩み Tochigi Public Health Service Association 28 トピックス

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